外国人と共に
今年の9月22日,東京高等裁判所は,スリランカ人の男性2名が難民不認定処分に対して訴訟提起の意思を示したにもかかわらず,その翌日に強制送還された件につき,国が彼らの「裁判を受ける権利」(憲法32条)を侵害したとして違憲判決を下しましたが,これに対し国は上告せずに確定しました。
また,今年の3月に発生した,名古屋の入管に収容されていたスリランカ人女性が亡くなるという事件も社会の耳目を集めています。
「ゼノフォビア」(xenophobia)という言葉を知っているでしょうか。
「外国人排斥」という意味で,2016年のアメリカ大統領選でトランプ氏の発言に対しオバマ大統領(当時)が批判する際に用いられたことが有名なようです。
今年5月の通常国会に上程され,結局廃案となった入管法改正案についても,その根底にはゼノフォビアがあるのではないかといった意見も示されているように,日本における外国人対応には内外から批判の声が止みません。
外国人をないがしろにするかのような施策は,もちろん彼らに対する人権侵害という問題がありますが,同時に日本人にとってもマイナスだと思います。
日本は2008年に人口減少に転じて以降,世界競争ランキングは世界31位(2021年),国民一人あたりGDPも世界25位(同),名目賃金上昇率(2012年→2018年)も主要13か国の中で日本だけがマイナス成長といった具合です。
多様性を重んじ,よりグローバルな視点を持つことは,国際社会における日本の存在感を取り戻し,ひいては国民一人一人の生活の質を向上させるためにも必要な意識ではないでしょうか。
(文責:金城)