朝ドラ『虎に翼』
NHKの連続テレビ小説・通称「朝ドラ」。
2024年4月~9月放送の『虎に翼』は、女性法律家の先駆けである三淵嘉子さんを主人公のモデルとしたドラマです。
女性法律家が主人公とあって、私も大変興味深く拝見しております。
このドラマの魅力は数ありますが、まずは、日本国憲法の理念が随所に織り込まれているところです。
ドラマは、平等原則を謳う憲法14条を朗読するナレーションで幕を開けます。そして、平等原則はその後もこのドラマのテーマとして、角度を変えて繰り返し描かれます。
また、夫が主人公を励ます言葉、好きに生きていい・頑張っても頑張らなくてもいい・後悔せず心から人生をやり切ってほしい、というのは、まさに憲法13条後段の幸福追求権の理念を体現するものです。
「日本国憲法」と言われると堅苦しく、自分には関係ないことのように感じますが、平等であること・好きに生きることは、まさに生活・人生に密着することです。こうしてドラマの中で描かれると、その理念がどんなに素晴らしいことなのかを強く実感できます。
さらに、家庭裁判所の実務が詳細に描かれていることも、魅力のひとつです。
家事部の調停事件で、期日の後に、調停官(裁判官)である主人公が調停委員と進行方針を打ち合わせる「評議」という手続をする場面が描かれました。この「評議」、もちろん非公開ですし、一般には、ほとんど知られていないのではないでしょうか。
また、少年部の少年事件では、窃盗を犯した身寄りのない少年が登場します。なんとか立ち直ってほしい、と語る主人公に、彼はこう言います。だったらアンタが助けてくれるのかよ、アンタの家に泊めてくれるのかよ、と。逆境にある少年に対して、いち法律家には、衣食住を用意して育てるという権限も能力もないのが実情です。立ち直りを強く願ってはいても、所詮きれい事で、結局はたいしたことはできないという無力感に苛まれることはしばしばです。
映像にすると地味で、ドラマにはなりにくい、と思っていた家裁実務が、NHKの、しかも朝ドラで、描かれるとは!
非常勤ではありますが調停官を経験し、また少年事件の弁護を定期的に担当している私にとっては、自分の仕事、ひいてはその意義を多くの人に知ってもらえる機会となり、まるで自分の仕事が日の目をみたような気がして、とても嬉しく感じました。
そういうわけで、大変楽しませてもらっているドラマです。
最終回を迎えるのはとてもさみしいですが、最後まで見届けたいと思います。
(文責:西田)